Azalove item book4

水族館でのかわいい姿を眺めるだけじゃ物足りない。そんなアザラシへの愛を、もっと深く楽しみたい人にこそ読んでほしいのが、岡崎雅子さんの『寝ても覚めてもアザラシ救助隊』(実業之日本社)です。本書は、幼少期に出会ったぬいぐるみがきっかけでアザラシに夢中になった岡崎さんが、獣医を目指す過程や救助隊としての奮闘を通じてリアルに、そしてアザラシの救助・保護・リハビリという現場が生き生きと描かれた一冊です。

救助の現場から見えるアザラシの姿

『寝ても覚めてもアザラシ救助隊』は、日本唯一のアザラシ保護施設である「オホーツクとっかりセンター」の職員であった岡崎さんや他の職員の方々が、海で弱っていたり迷子になってしまったアザラシたちを発見し、保護・リハビリをして自然に戻していくまでの一連のプロセスが丁寧に描かれています。

アザラシの救助に関わる人々がどのように動き、どんな思いでケアしているのか。そこには、社会的な背景や地域コミュニティとの関わりも絡み合いながら、アザラシと人間の絆が描かれていました。

一歩踏み込んだ現場のリアル

本書は、観察記録や写真集とは異なり、アザラシ救助の現場にあるリアルな日常を体感できる点も大きな特徴です。救助されたアザラシがどのような状態で発見されるのか、保護後に行われるリハビリの内容、そして自然へ帰すまでのプロセス。それぞれの段階で生じる葛藤や成長が文章と写真で丁寧に描かれています。

読み進めるうちに、「アザラシはこんなふうに助けられ、再び海へ戻っていくのか」と知る場面もありました。一方で、保護されたアザラシがすべて野生復帰できるわけではないことも本書では正直に描かれています。視力に障害があるなど野生での生活が難しいと判断された個体は、センターで飼育を継続しながら元気に成長を見守る選択がされることもあります。

「野生に返すことが最善なのか」「飼育を続ける方が幸せなのか」。アザラシにとってどの環境がベストなのかをめぐり、救助に関わる人たちが悩み続ける姿が印象的でした。さらに「そもそも保護活動は誰にとっても良いことなのか」という根本的な問いにも触れられており、簡単には答えの出ないテーマを考えさせられました。

また、岡崎さんがとっかりセンターで出会い、強く印象に残ったアザラシたちの紹介も心に残りました。一頭一頭の性格や特徴、そこにまつわる思い出が丁寧に綴られていて、岡崎さんにとってアザラシがかけがえのない存在であることが伝わってきました。

「ただただ、アザラシのそばにいたくて…」

著者の岡崎雅子さんは、幼いころからアザラシが大好きで、その「好き」という気持ちを仕事にしてきた方です。北海道紋別市にあるアザラシ専門の保護施設「オホーツクとっかりセンター」で飼育員として10年間活動し、これまでに65頭以上のアザラシの世話に携わり、そのうち37頭の保護に関わってきました。

大学在学中には、「アザラシ幼稚園」で知られるオランダのアザラシ保護施設「ピーテルブーレンアザラシセンター」を訪問。現地での経験を通して、アザラシの保護活動を仕事にしたいという思いがより強くなったそうです。もちろん、ピーテルブーレンアザラシセンターの立ち上げについて書かれている「まいごのアザラシをたすけて!」(復刊ドットコム)も読んでいらっしゃったとのこと。

『寝ても覚めてもアザラシ救助隊』は、そんな岡崎さん自身の体験をもとにアザラシの救助・保護・リリースの現場を描いた、保護活動の奮闘記のような一冊でした。本書で紹介されているのは活動のほんの一部にすぎず、とっかりセンターや野生のアザラシを守るために、実際にはさらに多くの経験や苦労を重ねてこられたのだろうと感じさせられます。

「ただただ、アザラシのそばにいたくて…」という言葉通り、アザラシに人生をかけている岡崎さんの想いが伝わってくる素晴らしい内容でした。ぜひ、多くの方に読んでいただきたいおすすめの一冊です。