寒い海で愛らしい姿を見せてくれるアザラシ。でも、その一生をたどってみると、そこには意外と知られていないドラマがあります。赤ちゃんとして生まれ、成長し、繁殖を経験し、やがて老いて命を終えるまで。ここではアザラシ全般に共通するライフサイクルを、やさしい目線で追ってみましょう。

誕生と子育て

白い産毛に包まれた、生まれたばかりのアザラシの赤ちゃん。

多くのアザラシの赤ちゃんは春先に生まれます。イルカやクジラと違い、アザラシは出産のために氷上や陸上へ上がり、基本的には一度に1頭の子どもを産みます。生まれた直後の赤ちゃんは、白い産毛(ホワイトコート)に覆われていることがあり、母親は陸上にとどまって約2週間、授乳しながら赤ちゃんを守ります。

この授乳期、母親はほとんど餌をとらず、自分が蓄えてきた脂肪をエネルギー源にして母乳を出します。父親は子育てに参加しないため、赤ちゃんの世話はほぼすべて母親の役目。短い期間にぎゅっと力を注いで、命をつないでいくんですね。

成長と独り立ち

高脂肪の母乳のおかげで、赤ちゃんアザラシは授乳期間のうちに体重が倍以上に増え、丸々と大きく育ちます。けれど授乳が終わると、母親は赤ちゃんを残して海へ戻り、子どもはいよいよ自力で生きていく段階に入ります。

頼りになるのは、これまでに蓄えた脂肪。そして自分の体です。海に入り、泳ぎ方を覚え、狩りのコツを少しずつ学んでいきます。ただ、この独り立ちの時期はかなり過酷。幼いアザラシはシャチやサメに狙われやすく、北極圏ではホッキョクグマも大きな脅威になります。野生では生後1年以内に約半数が命を落とすとも言われ、試練を越えられた個体だけが次のステージへ進んでいきます。

繁殖の季節

いくつもの危機をくぐり抜けて成長したアザラシは、だいたい3~5歳ごろまでに性成熟を迎え、大人になります。成熟したオスとメスは、毎年決まった繁殖期になると繁殖地(陸地や氷上)に集まります。

繁殖期のコロニーでは、オス同士がメスをめぐって激しく争う姿が見られることもあります。多くの種では、優勢なオスが複数のメスと交配する形が一般的ですが、種によっては一夫一妻に近い例もあります。メスの妊娠期間はおよそ1年で、通常は毎年1頭の赤ちゃんを出産します。こうして新しい命を育てながら、アザラシは毎年このサイクルを繰り返していきます。

老後と寿命

繁殖を重ねたアザラシも、年を取るにつれて少しずつ体の機能が衰えていきます。野生下の平均寿命は約25~30年ほどとされ、オスは繁殖期の闘争やストレスの影響などで、メスより短命になりやすいという報告もあります。

高齢になると視力が落ち、歯が抜けて獲物をとらえるのが難しくなり、動きも若いころほどはキレなくなっていきます。体力が落ちれば、捕食者から逃げるのも簡単ではありません。厳しい環境では、年老いた個体ほど生き残りが難しくなるでしょう。

死に至るまで

野生の海で、アザラシが穏やかな老衰だけで一生を終えるケースは多くないと考えられています。幼い個体や衰えた個体を中心に、最期は捕食者の餌食になることが少なくありません。海ではシャチや大型のサメが主な天敵で、北極圏ではホッキョクグマもアザラシを捕食します。場合によってはトドやセイウチが小型のアザラシを襲うこともあるとされます。

天敵を運よく避け続けたとしても、病気にかかったり、衰弱して餌がとれなくなったりすれば命は尽きていきます。陸上で生まれ、海で多くの試練をくぐり抜けながら生きる——アザラシの一生は、そんな自然の厳しさの中で静かに幕を閉じるのです。